2020年4月~6月あたりで買ってよかった漫画。 元々集めていて続刊が出ただけのやつは除いて、新しく見知った漫画に限定。
スペクトラルウィザード
全2巻。7月はこの漫画をとにかく推していました。
絵柄と退廃的な雰囲気から道満晴明的なナンセンス感を出してくるのかと思ったけど良い意味でけっこう違った。
スパイダーマンよろしく、"大いなる力には大いなる責任が伴う"を体現したような魔術師もいれば、主人公のスペクトラのように最強クラスの魔法を使えるのに楽しかった過去にしがみつき毎日を無気力に過ごす魔術師もいる。彼女らの生き様と葛藤、魔術師ギルドを滅ぼさんとする人間とわかりあえそうで至らないディスコミュニケーションがグッと来る。
単純な能力バトルでも面白いぐらいの設定なのに各々の魔術がメンタリティに紐付いていてストーリーにしっかり絡んでくるあたり、とても漫画が巧み。
同じ作者の別作品もあたってみたいところ。
忍者と極道
切られた瞬間の生首が喋りながら飛んでいくタイプの、カラッとした残虐さと台詞回しの最大瞬間風速がものすごい漫画。『衛府の七忍』や『特攻の拓』など様々な先達の影響を感じさせる。現在2巻、連載継続中。
許斐剛先生のような計算しないで飛んでる感じではなく、山口貴由先生のようにポップなラインを狙ってきているがちょっとズレているタイプであることが言葉でなく心でわかる。
エンブリヲ
90年代の虫系ホラー。全3巻。
少女漫画のように可愛らしく描かれた表紙とは対象的に、虫の造形や異質な存在を迫害する人間の陰湿さ・陰惨さがやたらと細部までリアルに描き込まれておりパニックホラーとしてかなりすごいところまで来ている。
伊藤潤二らのホラーより救いはあるほうだが生理的嫌悪感はこちらのほうが上かもしれない。
この漫画のおかげで「生きたまま虫に食われて死ぬ」が"こんな死に方は嫌だ"ランキングの2位まで浮上してきた。 (1位は未だにグリーン・インフェルノのように「生きたまま食人族に解体される」)
砲神エグザクソン
岡田斗司夫がYouTubeでおすすめしていた園田健一のSF作品。1997~2004年の作品。全7巻。
SFとして良作であると同時に知性体による"侵略"というのがいかなるものなのかを非常に巧く捉えている。また、ロボットに搭乗する主人公といえば読者としてはかんたんに予見も期待もできる熱い殴り合いバトルの筆致が優れているだけでなく、侵略に対し心の折れた地球人に反逆の意思を植え付けるための世論形成など、繰り広げられている高度な政治戦・情報戦・心理戦にもかなり見応えがある。(リアルタイムでない動画は編集・改ざんされている可能性が疑われるからタイミングが大事などなど、凝った思考で戦略を描いている)
サイエンスフィクションを成立させるためのリアリティにはこだわりがあるが、豪放なジジイが美人にモテまくっていたりするあたりのご都合主義はご愛嬌と言うか、懐かしさすら覚える。
ブレット・ザ・ウィザード
連続して、岡田斗司夫がYouTubeでおすすめしていた園田健一のファンタジー作品。2010~2013年の作品。全4巻。
魔法使いの戦いではなく「魔法が刻まれた魔法銃を持つ者同士の戦い」という一歩新しい感覚のファンタジーであり、戦略性の高いバトルが楽しめる。随所に見える園田健一の銃器や車へのこだわりとロリータ趣味も好きな人はプラスアルファで楽しめるだろう。
だいぶ打ち切り感のあるエンドなのだが全4巻の中で見どころは十分あるのでおすすめできる。