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関心を持てる事柄について

「発言は個人のものであり所属と関係ありません」という表明をするより所属を書かない方が効果的

SNSのプロフィール欄やブログ記事内でよく見かける「発言は個人のものであり所属と関係ありません*1」という表明に効力があるのだろうかと気になり、少し調べたところ先行研究があった。

2023. Caleb T. Carr, Rebecca A. Hayes, Cameron W. Piercy “Posts are my own”: Effects of Social Media Disclaimers on Perceptions of Employees and Their Organizations from Tweets

173名の参加者を対象にTwitter (現X) 上で「意見は個人のものです。リツイート≠支持」という免責表明がある場合とない場合で、投稿が個人および所属組織の評価に与える影響を比較した実証実験。

その結果は ポジティブな投稿は本人と組織の両方の評価を向上させ、ネガティブな投稿は両方の評価を低下させた。また、この効果は免責表明の有無に関わらず同程度だったことから 免責表明に効力はない と結論づけている。

免責表明があっても、能動的な投稿内容(意図的に「与えられる」手がかり, actively given cues)が、受動的なプロフィール文(「漏れる」手がかり, passively given off cues)より強く作用するとのこと。​

免責表明を使用するよりも従業員に個人アカウントから組織への言及自体を省略させる方が効果的だという実務的提言もなされていた。


なお、この記事の内容は自分の意見ではなく調べたことをメモしたものに過ぎない。

*1:"Posts are my own", "Opinions are my own" etc.

今年もRentioで加湿器をレンタルした

今年もRentioで加湿器をレンタルした。

使わない家具や家電を仕舞っておくスペースがないので、通年で利用しないものはレンタルするようにしている...と言うとレンタル代がかさむ生活をしているように聞こえるが、そうした家電の代表格にして唯一のものが加湿器である。

今年は象印のスチーム式加湿器EE-DC50をレンタルした。

12月の指定日に自宅に郵送してもらい、2月か3月あたりに引き取りに来てもらって返却するだけ。便利。

象印

スタディサプリの開発に携わっていた頃、講義動画に出演している講師の方が「喉を使う職業なので加湿器にこだわっており、象印の加湿器を愛用しています」と言っていたことを今でも覚えている。

クーポン

Rentioは毎年Kaigi on Railsでクーポンを配って頂いていてありがたく頂戴している。だが、残念ながら象印の加湿器全般には利用できないようす。

ただ、昨年は「せっかくもらったのだから気になっているが買う決断ができない家電をお試しするために使おう」と、シャープ ヘルシオ ホットクック KN-HW10G、パナソニック フードプロセッサー MK-K82をレンタルした。結果、どちらも自宅には不要だということが760円で判明した。

クーポンのおかげで余計な出費をせずにすみ、とても感謝している。折角なのでお友だち紹介プログラムURLを貼っておく。

www.rentio.jp

ランニングシューズ1号としてSupernova Rise 2 Running買った

おおむね週1、よくて週2〜3日で軽めのランニングをしている。

基本的に道具にこだわらず、形から入らないタイプ*1なので、靴もまったくこだわりなく(いつ買ったかも覚えていない)ASICSのシューズを何年も使っていた。

「初心者おすすめシューズ」的な動画がレコメンドされてきた折に「買うならこれかな〜」と踏んだアフィリンク先に行ったらSupernova Rise 2 Runningが半額近い値段で売られていた*2

靴領域における小売希望価格と市場価格の関係性はよく知らないが、公式サイトによると定価は15,400円らしい。

www.adidas.jp

しかも自分の足のサイズだけ安値となっていて他のサイズはすべて10,000円以上のままだった。このことに"縁-えにし-"を感じてしまい、購入するに至った。普段なら選ばないカラーリングだがそれもまた良い。

早速履いて走ってみると安シューズとは確かに違うな...と、"接地感"や"ガイド"など動画で仕入れたばかりの知識と感覚を紐づける時間がまあまあ楽しい。

*1:ジャンルにもよるが

*2:ブラックフライデーのためかと思ったが今でも安い

筆無精

業務や趣味で関心のあることをCosense (Scrapbox) にまとめるようになり7年以上が経ち、知識やノウハウをブログ記事としてスナップショットを取るモチベーションは無くなりつつある。書く機会があるとしたら何かを達成したタイミングや所属会社等への寄稿ぐらいだ。

そういった訳でこのブログは筆無精きわまる状況だったのだが、昨今感じ入るところがありブログをもうちょっと書いてみようと思うに至った。

なにも技術的なトピックでなくとも他愛ない日常や感情のスナップショットを残したり、それらが見知る人に届くことに意味を感じられそうな気がしている。

All You Need Is 3D-Secure (2025 Remix) を公開しました

3D Secure unofficial ambassadorの@ohbaryeです。

このたび、3Dセキュアの歌こと"All You Need Is 3D-Secure"のRemix versionを公開しました。

youtu.be

原曲を作った2022年10月は、主要なクレジットカードブランドが3Dセキュア1.0のサポートを終了した年であり、2.0への移行が大きな話題となっておりました。

今年2025年はといえば、3月末に日本でも加盟店での導入が原則として義務化されており、普及は加速していると思われます。

未だに実態は深く知られていない3Dセキュアのミステリアスさを醸しつつも、普及の喜ばしき趨勢をアンセミックに表現した楽曲が本作品となります。

3Dセキュアの更なる発展を祈っております。

Fintech, Rails, 運用, 高信頼性みたいな話をKaigi on Rails 2025でしました

トークの正式タイトルは「5年間のFintech × Rails実践に学ぶ - 基本に忠実な運用で築く高信頼性システム」。副題つきのタイトルは長くてブログタイトルとしては不利ですね。

Kaigi on Rails 2025は2021年から5年連続でスピーカーとしての参加になりました。

今回の発表について

発表に用いたスライドは以下。

主張は概ね以下の2枚にまとまっています。

すべてを要約した図

  • Fintechシステムとして求められる品質特性を実現するため運用でいろいろやってきた
  • いずれもFintechに限らずやることで高信頼性に繋がる

一般化

  • 求められる品質特性や、運用を通じて実現したいことは異なる
  • 自分の事業・プロダクト・サービスにあてはめて考えてみるとよい

今回もまたこれまでやったことないアプローチに挑戦してみました*1。やり遂げた1つの課題を深掘りするのではなく、派手さはないが見逃されがちな一見小粒なノウハウや工夫を"編纂"することで大きなストーリーとして提示するというアプローチ。

運用でやっているさまざま

たとえば運用パートで話した個々の取り組みはどれも大事だと思っているけどカンファレンスに単体で持っていくには強度が足りない。けれどもそれぞれが大きなストーリーの一部であるということを意識し、隣接する取り組みと並べることで意味が浮き彫りになる。そういう効果を生み出すような編纂をしてみました。*2

独立していた表現が、より大きな全体の一部となると、性格が変わる。見え方も違ってくる。前後にどういうものが並んでいるかによっても感じが大きく変わる。 (中略) 〝知のエディターシップ〟、言いかえると、頭の中のカクテルを作るには、自分自身がどれくらい独創的であるかはさして問題ではない。もっている知識をいかなる組み合わせで、どういう順序に並べるかが緊要事となるのである。

外山滋比古. 新版 思考の整理学 (ちくま文庫) (Japanese Edition) (pp. 40, 41-42).

いただいたフィードバックへの返信

発表時にXで実況的に感想をくださった方、発表後に話しかけていただいた皆さんありがとうございました。大変励みになります。

多かったのがSentryなどのエラートラッキングツールの運用の困りごとで、各社苦戦されているようですね。わかる......

どうやって運用を改善する時間を捻出しているのか

とりわけ何度も質問されたのが「どうやって運用を改善する時間を捻出しているのか」という点でした。

今回話した運用面に関わる株式会社スマートバンクのサーバーサイドエンジニアは20名弱であり、基本的には事業を伸ばすための開発が優先で、運用専門のチームがあるわけではないです。つまり運用は全員が関わる横断的なテーマであり、こうした横断的課題にどう取り組むのか?という問いに今期は委員会制度という構造を作って対処しています。

blog.smartbank.co.jp

この委員会のいくつかがシステムの運用に関して優先的に対処すべき課題を特定し、上期(2025年4-9月)にカタをつけてくれました。個人技で片付けられる課題もあればそうでない課題もあり、こうしたタスクフォースがあるおかげでうまくいった面は多分にあります。

もちろん細かいものを片付けたり個人の思いつきでガッと前に進めている出来事もたくさんあります。一気にお掃除するよりも日々tidyしていくことのほうが大事だったりもします。

こうした話も織り込みたかったのですが時間の都合上で触れられなかったためこの場で補足させてもらいました。

スライドわかりやすい

どうやったらわかりやすく伝わるかだけでなく、時間・場所が離れても資料としての価値が残ることを毎度意識しているので触れてもらえて嬉しいです。発表は見ていないけどスライドだけは見た、という人もいますしね。

正直、図表ぬきでスライド作るなら作業時間1/3ぐらいで済む...と思いつつも頑張っています。

トークの趣旨や流れを一枚絵で説明できるレベルにまで落とし込む、そうしたらあとはその図を流用していろいろ扱えます*3。なので最初に「今回の発表はこの絵だ!」みたいなのが"見"えるとだいぶ楽になります。見えないと最後まで苦しみます。

趣旨や流れを練っていたときの図

感想

毎度発表準備や練習が大変で、Kaigi on Rails 2025当日を迎えるのは楽しみもあり不安もありという感じなのですが、初日で発表を終えたあとは懇親会や2日目は大いに楽しむことができました。

最後になりましたがKaigi on Rails 2025を開催してくれたオーガナイザーの皆様、今年もありがとうございました。いち参加者としてもスピーカーとしても不便なく過ごすことができ、皆さんの尽力に助けられています。

来年もプロポーザル出せるよう精進します。

*1:毎年言っている気がするけど

*2:油断するといつも『思考の整理学』の話をしてしまう

*3:自分にはデザインスキルや絵心はないので、大事なのはインフォメーションアーキテクチャみたいなのかなと想像している

Vibe Coding: The Future of Programming (2025-04-17 Early Release) 読んだ

2025年8月にO'Reillyから出版される『Vibe Coding: The Future of Programming』のEarly Release版として2つの章が公開されていたので読んでみた。

  1. The 70% Problem: AI-Assisted Workflows That Actually Work
  2. Beyond the 70%: Maximizing Human Contribution

learning.oreilly.com

タイトルとは裏腹に"Vibe Coding"の話は少なく、むしろ副題の"The Future of Programming"やこれから AI を活用していくエンジニアに求められるスキルに焦点が当てられているのが興味深かった。実際には"AI-assisted Coding: The Future of Programming"という言葉のほうがタイトルにふさわしいように思うし、そういう期待で読むとよさそう。*1

タイトルにVibe Codingを使ったのはマーケティングのためかもしれないし*2Andrej Karpathy氏が元々提唱したVibe Codingに過剰な期待を持って読みにきた人に説教するみたいな感じかもしれない。

まだ Early Releaseということなので印象に残った点をいくつかピックアップする程度の感想に留める。

70% Problem

繰り返し出てくる"70% Problem" という言葉。これは現代の AI ツールが基本的なコードの約 70%(boilerplate、浅いドメイン、easy bug fix)を生成できる一方で、残りの 30%(エッジケース、アーキテクチャ改良、保守性、深いドメイン)は依然として人間が介入・補完して解決しないといけないという問題。

addyo.substack.com

デモを一発で作れて感動〜!しつつもデプロイなどのラストワンマイルでつまづいたり、機能拡張ができずにスタックしたり、一歩進んで二歩下がることの繰り返しばかり...といった話。まぁそれはあるよねという感じなのだが、本書は「残り 30%のためにエンジニアリングの専門知識が引き続き必要であり、その重要性はむしろますます高まっている」という点を強調している。

In essence, while agentic AI offers powerful tools for software development, it also amplifies the importance of foundational knowledge. To harness these tools effectively and responsibly, users must cultivate a deep understanding of software principles, ensuring they remain in control of the development process rather than becoming passive observers.

Software development is more than writing code, after all – it’s a whole workflow that includes planning, collaboration, testing, deployment, and maintenance.

ソフトウェア開発は単にコードを書くプログラミングだけでなく、「計画、コラボレーション、テスト、デプロイ、メンテナンスを含むワークフロー全体」という視点を持つことが重要だと。

In other words, while AI can generate code, it often struggles with engineering.

現時点では AIはプログラミングは得意だがエンジニアリングは苦手であるとか、『人月の神話』でいう「偶発的な複雑さ」の処理に優れているが「本質的な複雑さ」にはまだ対処できない*3、とも表現している。

ちなみにこの本の著者は Google Chrome のシニアエンジニアリングリーダーである Addy Osmani 氏。ソフトウェア工学やコンピューターサイエンスの専門性を十分備えているであろうエンジニアによる言説である点を付記しておく。

AI-assisted Coding の 3 類型

AI ツールを使ったソフトウェア開発のスタイルは 3 つに分けて説明されていた。

  1. First Drafter: AI モデルが初期コードを生成し、開発者がそれを改良、リファクタリング、テストする。「もういい、あとは俺がやる」スタイル。
  2. Pair Programmer: 開発者と AI が常に対話し、緊密なフィードバックループ、頻繁なコードレビュー、最小限のコンテキストで協働するスタイル。
  3. Validator: 開発者が最初のコードを書き、その後 AI を使って検証、テスト、改善するスタイル。

今の自分は主に First DrafterとしてAIを活用しており、Pair Programmer としては少しだけ、あまり Validator としては活用していない。それぞれのスタイルをもう少し実験してみたい。

AI-assisted Coding Golden Rules

Git を細かく使えとかジュニアとして扱えとかよく言われるものも含めて12個ぐらい。巷のブログではまばらに紹介されていることが多いが、本書に述べられている内容をメモしておくとよいのではなかろうか。

全部引用すると長いので特に良いなと思ったもの。

  • 常に検証する: AI 生成コードを意図と照らし合わせて検証/テストする。意図をテストとして書き起こすのをサボらない
  • 思考の拡張として活用する: AI は思考を置き換えるのではなく、能力を拡張するツール。考えることまで任せてはいけない
  • すべてのコードをレビュー: 人間が書いたものでも AI が書いたものでも同じ基準でレビューする
  • 理解できないコードの排除: 機能と影響を完全に理解していないコードは絶対にマージしない
  • 効果的なプロンプトの共有: 高品質な出力につながるプロンプトを文書化・共有する

レベル別アドバイス、成長戦略

シニア・ミドル・ジュニアそれぞれのエンジニアに合わせたアドバイスは実践的な内容だった。こちらもボリュームがそこそこあったので面白いなと思った点を 2 つだけ。

1つ目は、AI-assisted coderであっても定期的なAI デトックスをするとよいとのこと。時には AIのブースターを外して素のコーディングスキルの研鑽を定期的に行うというアイデアコアスキルの学習を省略してしまうとメタスキルが磨かれないという考え方に基づく。Vibe Coding の本なのに遠ざけているのは少し面白いが、本書の主張に照らし合わせれば納得感がある。

2 つ目は、AI時代にジュニア開発者が身につけられる最良の習慣の一つはコードのテストを書くことであるというアドバイス。テストを通じてシニアエンジニアのような審美眼を磨けるだけでなく、バグ発見ができたらそれはAIにできない付加価値としてチームに貢献できたことになる。ソフトウェアがどう振る舞うべきかの判断から入り、テストを書くことで AI-assisted Coding による成果物の品質と理解度も向上するとのこと。

総じて

冒頭にも書いた通り、現時点で読める2つの章ではvibe codingの話よりもAI-assisted codingが主流になっていく世界でどのようなスキルが必要なのか、どうスキルを磨いていくのかが中身であった。

技術革新が激しいので正式版が出る頃には世間の状況も一変していそうではあるが、普遍的なエンジニアリングスキルに焦点をあてるのであれば長く読まれる本になるかもしれない。

個人的には正式版と読み比べることで、Early Releaseで抱いた印象が変わるかどうかを楽しみにしている。

*1:余談だが昨今のAI codingという言葉に曖昧さを感じており、本書が用いるAI-assisted codingは指すものが明瞭でよい

*2:Simon Willisonは苦言を呈している https://simonwillison.net/2025/May/1/not-vibe-coding/

*3:関連: Out of the Tar Pit