肉のうまみがあふれだすとんかつ「蓬莱屋」
ずっと行こうと思っていたものの、とんかつ界隈でも最上位に近い価格帯のために尻込みしていた「蓬莱屋」についに行った。
感想
価格のバイアスもあるが期待を裏切らずすごく美味かった。 近隣の名店、「井泉」とはまた違う方向に"尖"ったとんかつだった。
ヒレカツを食べたのだが、とにかく肉がうまい。それに尽きる。
肉について
とんかつは価格帯が上がってきてもそのシンプルさを損なう方向へ趣向を凝らしたり量が爆発的に増えたりすることはほぼない。では価格は何と相関しているのかというと肉の質だと思う。
肉については詳しくないのだが、同じ店のとんかつでも倍近い価格差が存在することもある。一方を賄いレベルに手を抜いているとは考えにくいので価格の差分は肉の仕入れ値の差のはず。
ここ蓬莱屋はとにかく上等な肉で、噛めば噛むほど味があふれだす。固く締まりすぎたヒレでもないし脂身のような複雑な食後感を残すものでもない。牛肉のステーキで味わえるような食感と旨味だ。無論、豚肉の臭みもしない。
薄い衣
カウンター越しにパン粉を何度も細かいふるいにかけているのを見た。
肉を薄く包む衣はそれ自体が主役であろうとはせずに肉をいかにして引き立てるか、という役割に徹している。ざくざくとしたファーストバイトを楽しみたいというとんかつ好きには不満に思うかもしれないが、衣単体を口に含むとわかる上等で軽やかな油の香味はこのかつには欠かせないと思う。
揚げ場に見えたもの
肉が上手ければ良いとんかつができるわけでは当然なく、揚げ場ではとんかつを活かすこだわりが随所に見られる。
揚げたかつに刃を入れる際には二人がかりで、一人が箸で抑えつつもう一人が包丁を扱う。六つに分かれたかつからは油が溢れだす。放置すると衣を台無しにしてしまうので、即座に捨てる。先に述べたパン粉の扱い然り。
最高の塩
肉本来の味を引き立てる脇役としてソースにも劣らない人気を得ている塩にも言及したい。
最初にカウンター席に着いた時に調味料はソースしか置いておらず塩否定派のかつ屋かと思ったが、メニューを見ると「厳選した塩を置いています」とのことだったのでさっそく塩で頂きたい旨を申し伝えた。
どんなおこだわり塩かと思いつつ、出てきたのは予想の斜め上を行く三種の塩。
- 藻塩
- スリランカ産岩塩 (細かめ)
- フランス産岩塩 (粗め)
この中でもフランスの岩塩は別のとんかつ屋でも味わったことがあるので、実はとんかつ界では一定の地位を得ているのかもしれない。 それぞれの塩がどのように肉を引き立てていくか。考えつつ味わうことができて本当に良かった。
気づけば無心で肉と向い合ってしまう、すべてが肉の旨味を第一に構成されているかつが気になるなら、蓬莱屋だ。得難いかつ体験になる。