トークの正式タイトルは「5年間のFintech × Rails実践に学ぶ - 基本に忠実な運用で築く高信頼性システム」。副題つきのタイトルは長くてブログタイトルとしては不利ですね。
Kaigi on Rails 2025は2021年から5年連続でスピーカーとしての参加になりました。
今回の発表について
発表に用いたスライドは以下。
主張は概ね以下の2枚にまとまっています。

- Fintechシステムとして求められる品質特性を実現するため運用でいろいろやってきた
- いずれもFintechに限らずやることで高信頼性に繋がる

- 求められる品質特性や、運用を通じて実現したいことは異なる
- 自分の事業・プロダクト・サービスにあてはめて考えてみるとよい
今回もまたこれまでやったことないアプローチに挑戦してみました*1。やり遂げた1つの課題を深掘りするのではなく、派手さはないが見逃されがちな一見小粒なノウハウや工夫を"編纂"することで大きなストーリーとして提示するというアプローチ。

たとえば運用パートで話した個々の取り組みはどれも大事だと思っているけどカンファレンスに単体で持っていくには強度が足りない。けれどもそれぞれが大きなストーリーの一部であるということを意識し、隣接する取り組みと並べることで意味が浮き彫りになる。そういう効果を生み出すような編纂をしてみました。*2
独立していた表現が、より大きな全体の一部となると、性格が変わる。見え方も違ってくる。前後にどういうものが並んでいるかによっても感じが大きく変わる。 (中略) 〝知のエディターシップ〟、言いかえると、頭の中のカクテルを作るには、自分自身がどれくらい独創的であるかはさして問題ではない。もっている知識をいかなる組み合わせで、どういう順序に並べるかが緊要事となるのである。
外山滋比古. 新版 思考の整理学 (ちくま文庫) (Japanese Edition) (pp. 40, 41-42).
いただいたフィードバックへの返信
発表時にXで実況的に感想をくださった方、発表後に話しかけていただいた皆さんありがとうございました。大変励みになります。
多かったのがSentryなどのエラートラッキングツールの運用の困りごとで、各社苦戦されているようですね。わかる......
どうやって運用を改善する時間を捻出しているのか
とりわけ何度も質問されたのが「どうやって運用を改善する時間を捻出しているのか」という点でした。
今回話した運用面に関わる株式会社スマートバンクのサーバーサイドエンジニアは20名弱であり、基本的には事業を伸ばすための開発が優先で、運用専門のチームがあるわけではないです。つまり運用は全員が関わる横断的なテーマであり、こうした横断的課題にどう取り組むのか?という問いに今期は委員会制度という構造を作って対処しています。
この委員会のいくつかがシステムの運用に関して優先的に対処すべき課題を特定し、上期(2025年4-9月)にカタをつけてくれました。個人技で片付けられる課題もあればそうでない課題もあり、こうしたタスクフォースがあるおかげでうまくいった面は多分にあります。
もちろん細かいものを片付けたり個人の思いつきでガッと前に進めている出来事もたくさんあります。一気にお掃除するよりも日々tidyしていくことのほうが大事だったりもします。
こうした話も織り込みたかったのですが時間の都合上で触れられなかったためこの場で補足させてもらいました。
スライドわかりやすい
どうやったらわかりやすく伝わるかだけでなく、時間・場所が離れても資料としての価値が残ることを毎度意識しているので触れてもらえて嬉しいです。発表は見ていないけどスライドだけは見た、という人もいますしね。
正直、図表ぬきでスライド作るなら作業時間1/3ぐらいで済む...と思いつつも頑張っています。
トークの趣旨や流れを一枚絵で説明できるレベルにまで落とし込む、そうしたらあとはその図を流用していろいろ扱えます*3。なので最初に「今回の発表はこの絵だ!」みたいなのが"見"えるとだいぶ楽になります。見えないと最後まで苦しみます。

感想
毎度発表準備や練習が大変で、Kaigi on Rails 2025当日を迎えるのは楽しみもあり不安もありという感じなのですが、初日で発表を終えたあとは懇親会や2日目は大いに楽しむことができました。
最後になりましたがKaigi on Rails 2025を開催してくれたオーガナイザーの皆様、今年もありがとうございました。いち参加者としてもスピーカーとしても不便なく過ごすことができ、皆さんの尽力に助けられています。
来年もプロポーザル出せるよう精進します。