タイトル通りスマートコントラクトがメインなのだが1~2章はFintech業界やBitcoinの話題で、これは『ブロックチェーンのしくみと開発がこれ1冊でしっかりわかる教科書』と重複する部分もあったのでさらっと読み飛ばした。
個人的に面白かったのは3~5章で紹介される社会実装の実例。一般にブロックチェーンというとFintechばかりが想起される気がするが、生活・産業分野、Legaltech領域においても適用可能性が大いにあることと、そこでもたらされるのが既存業務の効率化だけでなくバリューチェーンの変革(中間業者を廃するなど)でもあることが示されていて、とても心が踊った。
- 最も実用段階に近い金融プラットフォームCorda*1
- グラミン銀行で知られるマイクロファイナンス分野
- Ethereum上でクラウドファンディングを実現するWeiFund
- DocuSignとVISAによる自動車リース
- 個人の身元や信用情報をコンセンサスに基づいて提供するKYC-Chain
- 土地や不動産登記の管理をブロックチェーン上で行う実証実験 in スウェーデン
- 中間業者を排したP2Pの保険ビジネス Lemonado
数年後はどうかわからないが10年後にはこの辺の製品やサービスに触れる機会がありそう、そんな近未来感があった。
6~7章のスマートコントラクト開発の部分はやや古いのかも、と感じた。
geth
(go-ethereum) を使ってローカルにEthereumネットワークを立てたりインタラクティブに操作するのは初手としては面白かったものの、truffle
やganache
を利用した場合に比べると開発体験がかなり劣るのでちょっとつらかった。
truffle
は最後に少しだけ紹介されているが、 公式のチュートリアルのほうが手厚いうえに情報も新しいのでこちらを頼ったほうが良さそうだ。
*1:米国のゴールドマン・サックス証券やJPモルガン、スイスのUBS、日本の三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、野村ホールディングスが関わっている