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関心を持てる事柄について

『BLUE GIANT』で定義される"ジャズ"と、明確に区分される人々

ビッグコミックススペシャルで連載中の音楽漫画、石塚真一『BLUE GIANT』1~2巻読んだ。
世界一のジャズプレイヤーを目指す高校生、宮本大のストレートでパワフルな青春・成長譚。面白い。

"ジャズ"の定義

読んでまず感じたのは、作品世界における"ジャズ"が明確に定義されていること。
良く分からない、難しい、オトナの、おしゃれな… 一般的によく聞かれるジャズへの偏見を、"ジャズ"を知らない側の人間に言わせた上で、「みんなそう言うけど、ハゲしくて、自由な音楽が"ジャズ"なんだ」と大が一蹴する。

 

そう、「ハゲしくて、自由な音楽」。これがこの世界における"ジャズ"の定義、本懐だ。

二分される登場人物と大

『BLUE GIANT』の世界ではこの本懐をわかっているか否かで、登場人物の立ち位置が明確に分断されている。
そう、この世界の登場人物は"ジャズ"を知っている人と知らない人に完全に二分されているのだ。

もちろん主人公の大は前者に属する。
 

ただし、大はその中でも特殊な能力を持っている。演奏によって"ジャズ"を知らない人間に"ジャズ"を知らせる、伝える力だ。

"ジャズ"を知っている人は大の才能(本懐を理解し、表現できる能力)を見抜くし、知らない人(友達の周平、同級生の女の子)は大によって本懐に触れさせられ、"ジャズ"を感覚で理解し、大たちのいる領域へと踏み入れることになる。

このシーンこそがこの漫画の最も"熱い"ところで、漫画的にも力を込めて描かれている。
音の出ない漫画でその熱量、才能、感動をどう描くかがやはりポイントで、今のところかなり良い。

最初から大の才能は顕在化しているし、コミックスの巻末に挟まれる後日譚から既におおよその結末は読者に知らされている。
それでも、大の才能や彼を取り囲む環境がどんな過程を経るのか、どのような人間を、ジャズを描くのか、という疑問が好奇心を惹くし、今後の展開が楽しみ。


1点、今後の展開で気になるのは、大たちの"ジャズ"以外のジャズは描かれないのだろうか、ということ。そもそも「ジャズとは何か」という問いに正解は無い。どのような解釈も自由なはずだが、もしこの漫画で異なる定義のジャズを信じる人々が描かれない、または登場してもこの物語からは消えていく、言い換えれば「切り捨てられていく」のであれば残念だ。

そういった人々とぶつかっていき、相対化することで大たちの信じる"ジャズ"がより熱く、激しく描くことができるはずだから。